2006年06月01日

ET VOUS?

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『男と女』

テレビで久しぶりに観ました。基本的に家では映画は観ません。画面に集中できず、気が付くと絨毯に落ちた髪の毛を拾い始めます。なぜ今、拾わなければならないのかは当人にも不明です。必ず外部から隔絶された暗闇(映画館)へと自分を追い込む必要があります。でも今回は思わず最後まで観てしまいました。本当にいい映画です。もう何度も繰り返して観ているのに、なぜこんなにも夢中にさせるのでしょうね?そして1966年、自分の生まれた年の映画!

フランス語は愛を語る言語です。ささやくようなボワボワとした語感の美しさは類を見ません。映画の中でアヌク・エーメが“ET VOUS?”と囁きます。背筋がゾクゾクと走りました!多分、撮影当時30代前半のはず。今の自分より年下なのにこの色気は何!本当にフランスは大人の国です。アンニュイという言葉がこれ程似合う女優もいないでしょうね。10年以上の時が流れ、ある映画で彼女に出逢いましたが、ほとんど変わっていない美しさでした。ある意味すごいことかも知れません。
ちなみに何を語っていてもドイツ語は演説に、中国語は喧嘩しているように聞こえます。言語が持つ固有の響きは不思議なものです。

映像からカットカットで切り取ったスチルですらため息の出るようなフォトジェニックな絵。どのシーンもおしゃれな雑貨店の絵葉書やポスターで売れます。多分ゴダールと同様、この映像感覚は監督クロード・ルルーシュの天性のものなのでしょう。海岸を犬と散歩する老人、海岸で鳥と戯れる子供たち、モノクロームのベッドシーンなどなど、全てのシーンが愛しい映画です。

サントラまで引っ張り出して聴いていますが、フランシス・レイの音楽はこれもまた見事!ピーエル・バルーの唄といい、フランスとブラジルが音で交わる映画です。昔は聞き流していた“SAMBA SARAVAH”での名前の列挙の歌詞も今ならしっくりきます。

いやあ、久しぶりに堪能しましたよ。未見の方はぜひ挑戦してみてください。
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2006年05月29日

ぼくを葬る

最低限の時間(尺は1時間半を切ります)、最低限の描写(説明的な台詞、映像は皆無)の映画です。でも決して出来は最低ではありません。最高ではなくても、最良の映画です。ここまでストイックに淡々と抑制された描写は見事。意図的に間をはずして、丁寧に計算された演出は結構好きです。
癌で余命が3ヵ月と宣告された31歳ゲイのカメラマンが主人公。わずか3ヵ月!ほんとうにあっという間の時間で人は一体何が出来るのか?死というもは誰にでも均等に訪れる決め事です。それは単に早いか遅いかだけの問題であり、死ぬ時は独りです。自分なら一体何をするのか?自分ならとうてい答えは出そうもありませんね。映画でも明確な結論らしいものは提示されておりません。観客は深い寂寥漂う空気感の中を漂うしかありません。決して心地よいものでなくても……。

ジャンヌ・モローが相変わらず素敵。最近、定番の役ところ、若きを導く老齢の賢者(でも若い頃は結構無茶をした?)という感じです。
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2006年05月28日

嫌われ松子の一生

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待望の『嫌われ松子の一生』を公開日に早速拝見。

良識ある大人は越えてはいけない一線があります。大人なんだからそんなことやこんなことはしちゃだめなのよ!という守るべき国境線があるはずです。多分……。でもこの監督はそんなこと余り関係がないようです。確信犯的に良識を破壊し、キ○○イとヘ○○イの領域へを観客を誘います。全編悪ふざけと悪意に満ち、ギミックかけまくった非現実な妄想と化し、リズムのはずし方(オフビート)もあからさま。でも「ふふふ…。ここでどうや!これでも食らえ!ふふふ…」というどこか冷めて客観視している監督の冷徹な眼が見え隠れします。俳優は全員コスプレ大会で絶叫芝居爆発。特に主演の中谷美紀の壊れっぷりは郡を抜いています。熱演というか熱病というか歯止めが利かないまでに壊れています。間違いなく監督のサディスティック(それも超ど級)なコントロールが窺われます。そら、クランクアップした後、虚脱状態で社会復帰不可能になるよな。
そして相当くどい映画です。これでもか!これでもか!いやいやまだまだ!とひつこく迫ります。きっと良識ある大人は嫌いな映画でしょう。別におすすめもしません。パワーはありますけど、おしいところで前作『下妻物語』は越えれなかったかな?
彼岸と此岸の境界は曖昧です。“POINT OF NO RETURN”あたりを意図的に彷徨う快楽は絶大なものです。ぜひ劇場へは良識を捨て、アホになりに行って下さいね。
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2006年05月25日

コーヒー屋はモノクロームの夢を見るか?

   映画『グッドナイト&グッドラック』

マッカーシー率いる赤狩り時代のアメリカ、CBSテレビの実在人物エド・マーローの物語です。どこまでもクールでスモーキーな映画ですね。

光と影のコントラストが明快なモノクローム映像が見事です。ここまでブラック&ホワイトが極端だとシルエット部分は完全に闇となり、シャツなど白い部分はハイキーに飛んだ面となります。極めてフォトジェニックな冷たい質感の映像です。映画のタッチと同様本当にクールです。実在するニュースフィルムと組み合わせるためだそうです。そしてスクリーンを越えて漂ってきそうな紫煙。タバコ!タバコ!これでもか!タバコ!という程みんなタバコをぷかぷか吹かします。見ていても、かなり煙い!そしてこれもまたクールです。抑制された内的な演技や極力説明を省いた演出も素晴らしい。

でもでも、時代と国を越えた日本の観客に「何か」を残すのは難しいかも知れません。訴求する共通言語が違いすぎます。そして最悪なのはホワイト基調のモノクロームに白の日本語題字幕がのっているため、全く読めない!会話の速度についていけず、ストレスが多い字幕です。何とかならんのかいな!

昔、普通の人の夢はモノクロームで、特異な人がカラーだとか聞いたことがります。でもほんまかいな?という感じです。視覚で認識している世界はカラーなのに白黒の夢なんて!その方がヘンな奴のような気がするのですけど。毎日、普通にカラーです。他人の夢の中は覗けないので真実は藪の中。
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2006年05月22日

ジャケット

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現実と幻想(夢)の微妙な境目をテーマにした映画。何が現実で何が夢なのか?覚めない夢は現実なのか?現実の認識は極めてあいまいです。昔から主観的な現実の崩壊を描いた映画が大好きです。

文学なら、叙述により世界をわずか1行の文章で崩壊させることができます。P.K.ディックの小説が好きな理由です。

映画なら映像で持って観客を巧みにだますことができます。そもそもすべての映画は映像をフィルムに焼き付けた時点、それを視覚で認識して時点で完璧に虚構のはずですが現実と錯覚するリアリティを持ちうるものです。

そんなこんなで現在公開中の映画『ジャケット』はテーマ的には直球ストレートのはずですが、結果は………?2時間を切る短尺の映画なのに、体感時間が長い。演出と脚本の問題でしょうか?

一見して思い出した映画がエイドリアン・ライン監督『ジェイコブズ・ラダー』です。『ジャケット』のジャックが湾岸戦争の後遺症に悩まされているに対してこちらの主人公(演ずるはティム・ロビンス)はベトナム戦争。性懲りもなく世界各地で戦争を繰り返しているアメリカの影の部分です。どちらも生死を彷徨った戦時体験で現実認識が甘くなっています。映画は主人公の目線で描くため、この世界が主人公の実在する世界なのか妄想する世界なのか観客には判断がつきません。暗くグロテスクな描写も似ています。(詳しく書くとネタばれになるのでこの辺で……)

テーマが好きなだけに惜しいところでしたが全体が散漫な映画です。これもこけそう!最近こけそうな映画ばかり観にいっていますね。
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2006年05月19日

ナイロビの蜂

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ブラジルのフェルナンド・メレレス監督の『シティ・オブ・ゴッド』に次ぐ最新作です。一応ブラジルつながりで押さえとかないといけませんから。

イギリス製作、イギリス俳優いっぱいのこの作品にブラジル出身の監督がどの程度プロダクションに関わっているのかは知りません。え?何で?という感じです。でも結果は吉と出たようです。何よりもメレレスの映像が見事!的確なカメラの動き、アングル、明確な色彩、流動的な露出と技術を駆使し、躍動的なスタイリシュな映像を作り出しています。本当にうまい!そしてレイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズというイギリスらしい2人の俳優の巧みな表現が秀逸で、内省的な演技と映像の動きの対比がうまくモンタージュされています。映画のストーリーは社会的な厳しい現実(背景)と、人と人のつながりと思いに関する少し悲しいお話です。観終わっても決してハッピーにはなれません。結構重いです。でもいい映画です。下世話な話ですが間違いなくこけるでしょう。はっはは、すぐに終演すること間違いなしです!お早めに劇場へどうぞ!
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2006年05月02日

L'ENFER

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いかにもフランスらしい映画。いやぁ!久しぶりにフラン映画観たな!という感じです。余りにもパーソナルで恋愛至上主義的、そして業が深い!フランスらしいといっても、クシシュトフ・キェシロフスキはポーランド、監督、音楽はボスニア出身など多国籍軍ですが、全体に漂ってくるのはまぎれもなくフランス映画の空気です。たいしたスートリーはなく、生々しいけど淡々とた日常、傍からみればどうでもいいような個人的苦悩に振り回され、そして物語は唐突に終わります。これぞフランス映画ですね!いやあ、大好きですわ!最近この手のフランス映画の公開が減っているので悲しい限りです。

この映画の女の人はみんな怖い!それもかなり怖い!魅力的だけど、妙にギラギラしていて異性としては現実的には相当近寄りがたい存在です。そして演じている女優も皆うますぎます。特に最近は定番化しているエマニュエル・ベアールの素ッピンの生々しさがすごい!この人は年を食ってどんどん自然体になって、生々しいいやらしさ一杯です。

しかし邦題の『美しき運命の傷跡』がよくわからん!なぜこんなに覚えにくい意味不明のタイトルなんでしょうか。なにが美しいのか何が運命なのか?わからん!キェシロフスキの遺稿「天国」「地獄」「煉獄」3部作の「地獄篇」で、原題の“L'enfer ”にこそ意味があります。


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2006年04月25日

EYES WIDE SHUT

映画の中の眼鏡のお話です。

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まずは『ANNA』
昔の漫画によくあるステレオタイプな使用方法です。眼鏡といえばこれでしょ!眼鏡かけた地味な女の子が実ははずすと誰もが眼を引く美女であったという上半身45度の角度でのけぞってしまいたくなるようなベタな設定です。さらにこの映画は眼鏡なし状態に一目惚れした富豪が自分の会社の部下である眼鏡着用状態(同一人物)に気が付かないというさらに10度はのけぞりたくなる様な設定です。そんなあほな!という突っ込み所いっぱいのはずですが、この映画は許せます!69年という時代の空気感とあまりにもかわいいアンナ・カリーナがいい年こいたオヤジさえもメロメロに夢見させてくれます。ゴダール時代のアンナ・カリーナは凄すぎる!

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次は『EYES WIDE SHUT』
余りにも偉大すぎる作家キューブリックの遺作です。
自宅の普段着姿で娘の世話をする眼鏡姿の二コール・キッドマンが妙に生々しいのです。旦那にエスコートされロングドレスでパーティに臨む晴の場と対照的な生活感のある描写です。確かに結婚式のようなアップにした髪形・化粧に眼鏡は合わしにくいものです。映画自体はキューブリックということで過剰に期待しすぎただけにいささか空回り気味です。本編より予告の方がかっこいい!でもこういうディティールの創り込みは見事です。人物描写がものすごく生々しい!最も印象的な映画の眼鏡のひとつです。
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2006年04月07日

認識不足なのよ

何気にテレビを見ていていつも気になるCMがあります。ライオンのクリニカデンタルリンスです。眼が離せず、見入ってしまうんですね。この人は誰?とすごく気になっていました。あ、客観的に自己分析すると何となく気になる理由はわかります。眼鏡、スレンダー、すっきりとした細面で幸の薄そうな顔あたりですかね。

話は変わって先日観にいった映画『好きだ、』でも主人公の姉役の女優がすごく気になっていたんです。映画自体は微妙ですね。きっと監督は台詞や動きではなく、役者の醸し出す空気感をフィルムに焼き付けたい人なんでしょうけど今回は?映画は高校時代と17年後の34歳をつなげます。演じる役者が

       宮崎あおい→ 永作博美
       瑛太    → 西島秀俊

となります。これに違和感を感じるか、はまるかで評価が分かれるところでしょうね。容姿の変化は納得(我慢)しても声質(宮崎→永作)が変わりすぎ!と異物感でいまいち乗り切れず。でもきっと、監督は確信犯であえて似ていないこのキャスティングを選んだはず。そして気になったのはお姉さん!この人の薄幸な空気感が心地よかった!

本題にも戻るとクリニカとお姉さんは同一の役者でした。
ガーン!何でわからへんねん!という感じです。センサーとなる視覚などの外部情報入力感覚器およびその感度(感受性)は問題なかったはずです。どちらの対象も無意識に興味(好感)を示しているんですから!問題はOSです。それを後処理して情報分析する脳がつながってない!認識力が不足しているらしく、自分の場合はしばしばあることです。恐ろしい!これまでも知らずにいろいろなことを見過ごして人生を生きてきたのかも知れないですね。もっと素晴らしい世界にも気が付かなかっただけかも!

ちなみに彼女の名前は小山田サユリ。フィルモグラフィを見ると何度かスクリーンでお見かけしていたようですね。これも全く気が付かんかった!
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2006年03月29日

ゆるゆる珈琲派推薦映画

このブログでしばしば提唱しています確信犯的なゆるさを提供するという“ゆるゆる珈琲派”(←命名は突然炎のごとく&派閥といってもTIPOGRAFIAの独立愚連隊)の推薦映画が決定しました。現在公開中の『かもめ食堂』です。
            カチンコ
いやあ。ほんまにゆるゆるしてまんな。リアリティはないけど漂う空気感が堪りません。一応フィンランドロケの日本映画です。決して若くはない女性3人が携わるヘルシンキの食堂(カフェ)の物語です。
           
きっとこれからカフェでも喫茶でも何らかのお店を自分でやりたいと夢見る人には「クー!」となること間違いなしの映画です。既にお店をやっている人にとっても「ワカルワカル!」という映画です。

最初は閑古鳥が鳴いていた店(だってヘルシンキでおにぎりが売りの食堂ですよ!)がいろいろ人といろんなことがあってお客様で満席になるまでのお話です。テロリストも人種差別主義者も出てきません(当たり前)。たいしたことは起こりません(これも当たり前)。でもうんちくに満ちた台詞が一杯です。

「コーヒーは自分で淹れるより他人に淹れてもらった方がおいしい」
「おにぎりは日本のソウルフード」
「コーヒーをおいしくするには“コピ・ルアック”と唱える」


映画の中で何度となくペーパーフィルターでコーヒーを点てる場面が出てきます。ケトルから湯を少しずつ注ぎ、ほわほわと湯気が拡ろがっていきます。湯の注ぎ方が甘い!なんて突っ込みは珈琲武闘派(別名珈琲技術至上主義者またの名を珈琲ハードコア派)に任せておき、ゆるゆる珈琲派は湯気を楽しみます。

コーヒーをおいしくする呪文である“コピ・ルアック”とはインドネシアのジャコウネコが食べたコーヒーの完熟の実を糞から集めたコーヒーです。幻のコーヒーと呼ばれており、映画でもこのコーヒーを飲むシーンがあります。“コピ”はインドネシア語の“コーヒー”。

この映画を観る人は腹減り厳禁です。食べ物が本当においしそうなんですよ。塩ジャケ、とんかつ、生姜焼き、白い飯、シナモンロール……。お腹がきゅるきゅるとなります。食べることは本当に素敵なことです。人生の至福です!生きることは食べることであり食べることは生きることです!食いしん坊推薦映画です。でもおにぎりってなんであんなにもおいしいのでしょうね?“ソウルフード”という言い方は言い得て妙です。確かに世代を超えすべての日本人の琴線に触れる魂かも知れませんね。
            カチンコ
余談ですがTIPOGRAFIA店主は極めて食い意地の張った血筋です。父方の実家は漬物、その親戚にうどん、そば、日本料理と“食”がルーツです。食べることが大好きで、おいしそうに物を食べたり飲んだりする人を見るとホッとしますね。


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2006年03月14日

THE LOOK

「眼は口ほどに物を言う」という言葉の通り、眼が何かを語る人はすごい!
すぐに落ち着き無く視線をはずして、周辺を漂う店主とは対称に視線だけでその人固有の空気を醸し出します。かつてローレン・バコールは“THE LOOK”と呼ばれていました。今日は柴崎コウの話です。
            カチンコ
恒例の日曜日のレイトショーは『県庁の星』です。映画自体は毒にも薬にもならないけどそれなりに楽しめる映画。まあ、テレビ的な毒のない映画なんですよね。昔なら馬鹿にして絶対観に行かない映画でした。(我ながら丸くなったものだ)。でも1週間の勤務を終え程よく疲れた身体にあまりにもデモーニシュな毒のある映画は正直きつい!例えば悪意に満ちたラース・フォン・トアーの映画なんかを観たもんなら、風邪を引きかけた子供に雪の中寒風摩擦させこれでもかと生牡蠣を食わせるようなもんですわ。脱線しますが、彼の映画は嫌いですが、そのダークサイドのフォースは余りにも強くパワフルでほとんど観に行ってますね。今度の『マンダレイ』も二コール・キッドマンすら敵前逃亡したという底意地が悪い性悪映画のようですね。観にいくかは微妙?ということで、もっと心に優しい映画を選択しました。
            カチンコ
昨年の個人的なベスト10には入ろうかという傑作『メゾン・ド・ヒミコ』でもその存在感が圧倒的でしたが、柴崎コウは結構すごい人かも?いい役者です。眼が演技します。(もともと容姿の整ったひとですから)一種の汚れ役なんでしょうけど、はまり役です。『メゾン・ド・ヒミコ』と似たような役ですが、映画が進むにつれて観客も感情移入して、どんどんいい顔してくるんです。(でも役柄の割には脚細すぎ、スタイル良すぎ!)。いやあ、素直にうまい役者です。こういう屈折した女の子の役がうまい女優(例えば市川実日子とか)は大好きですね。まだ20代半ばのはずですから、今後年を食って役柄が拡がってくると本当にいい女優になりますよ!
『メゾン・ド・ヒミコ』では尾崎紀世彦の“また逢う日まで”のシーンが最高です。ミュージカル嫌いだけど、普通の映画の唐突なミュージカルシーンはうれしくなってしまいます!
            カチンコ
話は変わりますが、『嫌われ松子の一生』でも中谷美紀の壊れ具合がすごそうですね。予告編を観ていて行きたくなりました。整った人が確信犯的に傾(かぶ)くのは観ていて楽しい!(シャーリーズ・セロンの汚れ役はみえみえでうざいけどね…)。監督中島哲也の前作『下妻物語』もギミックだらけ、やりすぎ力技一発は結構好きです。
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2006年03月06日

アカデミー賞発表

先日、紹介いたしました『クラッシュ』は作品賞、脚本賞、編集賞の3部門で見事オスカーを受賞いたしました!万歳!万歳!手(チョキ)確認するため、みんなで映画館へ行こう!

昨日は同じ群像劇と言われている『THE 有頂天ホテル』を恒例のレイトショーで観てきました。よく当たってますよね。今年の邦画では間違いなく興行収入上位になるでしょう。確かにそれなりに楽しめますけど、きれいにまとめすぎなんですよね。テレビでお馴染みのタレントがちょこまちょこまかと動き、ちゃんちゃんと大団円して終わる感じで、テレビかレンタルで楽しむ分には幸せな映画です。それしか書きようがない……。

定番監督『アメリカ、家族のいる風景』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』あたりに期待してます。あと『エミリー・ローズ』と『白バラの祈り』も密かに大穴を狙ってます。
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2006年02月27日

日曜日の夜はレイトショーへ

月曜を定休日にして以来、多少心のゆとりができ日曜日の夜は映画へ出かけています。9時前後の上映開始のレイトショーは入場料が安く(1200円均一)、空いていて快適で、郊外型の商業施設併設のシネコンなので、開演までは館内で買い物も楽しめます。昨夜は「クラッシュ」。
            映画
すごい映画です。たぶんアカデミー賞の最優秀脚本賞は取るでしょう!本当に見事な脚本です。現代アメリカの人種差別と偏見をテーマとした決しいとっつきやすい映画ではないですが、あまりにも生々しくて、痛々しくて、切なくい映画です。かすかな希望もありますが、それ以上に絶望があります。でもそれは現代アメリカの現実です。ドル箱スターではないけど、素晴らしい役者たちの演技で静かにリアルに表現されています。
            映画
映画はいわゆる群像劇というスタイルです。ロバート・アルトマン「ショートカッツ」、ポール・トーマス・アンダーソン「マグノリア」、ボブ・ジラルディ「ディナーラッシュ」、タランティーノ「パルプ・フィクション」など傑作も多く大好きなジャンルです。ある時間、ある場所において複数の人物が織り成しがタペストリー(つづれおり)となる物語とでも言えばいいかな。映画では、前半、複数の主人公の行動をカットバックしてすすめながら、最終的にある時間・事件などに一点収束させるという構成を取ります。ストーリーの語り部としての構成力が必要です。観客としては最初、個々の主人公の関係が見えないため、少しもんもんとしながらも断片的な物語を進みます。そしてパズルのピースが最後に見事な一枚の絵となる瞬間(いわゆるオチ)に歓喜するのです!
            映画
私論では群像劇は最も映画的な構成であり、勝手に「神の見えざる視点」と呼んでいます。現実の人生も基本的には群像です。でも同じ時間や場所、事柄、空気を「誰か」と共有しながらも最終的には「自分」しか知ることはできません。どこまでいっても主観であり、絶対的な客観は存在しません。映画は神の見えざる視点(絶対客観)として物語を紡いでいくことが可能です。これこそ映画のもつ最大の力です。もちろん文学も同様の視点を持ってはいますが、どちらかといえば主観的描写(一人称)を突き詰める方が向いている気がします。
            映画
脚本・監督のポール・ハギスという人は前作の「ミリオンダラー・ベイビー」でもそうですが、リアリストというかニヒリストというか、かなり性格悪いですね。でも切れ者です。気に入りましたので、作家としては今後も新作には必ず付いて行きます。ちなみに「ミリオンダラー・ベイビー」でも前半の主人公と共有した動き・感情・躍動感を完全に封じるえげつない仕打ちを仕掛けています。今回も前半と後半と対比が基本にあります。主人公たちは望むものではなく、皮肉な現実に踊らされ変化していきます。人は簡単に変わるんですよね。この変化を固い役者の演技でリアルに表現しています。あまりにも痛くって、切なくって涙が出そうになります。
            映画
この映画は観終わってもハッピーにはなりません。爽快感で現実を忘れることもできません。でもそれは映画に何を求めるかによります。
          
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2006年02月18日

繋がるパズルのピースと時間

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レコード棚で見つけた『ブエノスアイレス』のサントラを聴き、時間の持つ複雑さを憂います。
問題となったのは冒頭の滝の音に続いて流れるカエタノ・ヴェローゾの“Cucurrucucu Paloma”。ああ、何とこんなところで聴いていたのですね!大好きな曲であり、大好きな映画です。でもこの2つのパズルのピースは繋がっていませんでした。どちらかというと印象に残っているのはペドロ・アルモドバル監督『TALK TO HER』でカエターノ自身がチェロをバックに唄っているシーンです。ああ、何と心を締め付けるような、切り裂くようなやばい曲なんだと!その時点で何枚かのカエターノのアルバムは聴いているはずでしたが、記憶の断片はリンクしておらず、このおっさんやばいかも!とここで初めて認識。(後日、カエターノへの巡礼が始まり、40枚組コンプリートBOX『TODO CAETANO』まで行き着きました。昨年の来日公演は文句なしのベストライブアクトです)。でも、もっと驚きはこの曲をかつて、それも大好きな映画の中ですでに聴いていたことです。時間の流れが繋がりました。ウォン・カーウァイ、ペドロ・アルモドバル、カエターノ・ヴェローゾというピースが“Cucurrucucu Paloma”という曲を巡って旅してきた時間が見事に繋がりました。記憶の持つ複雑性を感じます。脳は感覚器より受容した周辺情報を取捨選択して蓄積していきます。メインメモリーに保存しながらも、一部の記憶は捨てずに、圧縮をかけ潜在記憶として抑圧します。これが何かのファクターによって解凍されてでてくるんですよね。時間というものは完成図の見えないパズルのようなものです。日々ピースを組み合わせていくのですが、その個々のつながりや全体の俯瞰図は全く判りようがありません。ミニマムな領域の日々の積み重ねのみが真実を教えてくれます。でもそれはいつ?誰にもわかりません。

ちなみに『ブエノスアイレス』のサントラにも収録されており、英題でもある“HAPPY TOGETHER”のこみ上げる様なメロディが大好きで、クーとなります。
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2006年02月15日

ミュンヘン

オリンピック開催に合わせるかのように「ミュンヘン」が公開中です。あまり積極的にお奨めしませんが、まあ問題作でしょうね。
まず政治的な背景を知らないと入りにくいかな。恥ずかしいことにこの事件のことは全く知りませんでした。ユダヤ人とパレスチナ人のイスラエルを巡る憎悪関係も同様です。
映画自体は70年代のアメリカのサスペンス・アクション映画の肌触りです。リアルタイムで映画館で観た訳ではないのですが、テレビの洋画劇場の定番で夢中になってかじり付いていました。「フレンチコネクション」なんかのタッチを意図的に酷似させてます。粗い粒子の映像、ドキュメンタリー的なリアリズム、生々しいアクション描写などなど…。
さすがにスピルバーグだけあって、ディティールのつくり込みは見事。実話をベースにしているだけに、小道具や衣装、背景などに恐ろしく金がかかっているはず。この時代のスーツは渋い!サイドベンツの細身の2つボタンにフレアのパンツ、結び目がでかいタイ!そしてみんな横分けハンサムな髪型には横山剣でなくても、いいね!と叫びます。車も渋い!おおフランスの情報屋の乗っているシトロエンよ!
同時にスピルバーグの鬼畜趣味丸出しの映画です!何せ「プライベート・ライアン」の冒頭でいきなりノルマンディー上陸のえげつない描写を嬉々として突きつけた男ですから!これはテクノロジーの進歩です。着弾と破壊される肉体の生々しい描写、銃器の乾いた発射音、爆弾が炸裂する重低音などは70年代の映画にはありません。かなり痛いよ!
ディティールにはまりながらも、入り込めないのは主人公に感情移入できない所以でしょうね。善悪の彼岸は曖昧です。復讐のために家族を犠牲にして相手を追い詰め、同時に追い詰められていく主人公に共感はありません。復讐が無限連鎖していき、後半どんどんと疲弊していきます。「フレンチ・コネクション」の刑事は一応「いいもん」であり、麻薬の爺さんは「悪役」で勧善懲悪的に割り切れました。この映画には善悪はありません。個々が勝手な言い分で復讐を増幅させていっているだけで、最後には観客までを重くさせます。もちろん、監督自身がこれを意図的に演出している点ではいい映画なのですが、素晴らしい映画??少しリアルすぎます!映画は幻想であって欲しい人ですから……。
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2006年01月26日

ナイスガイエディ死す

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クリス・ペンが43歳で亡くなりました。死因は不明。「レザボア・ドッグス」での飄々としたキャラクターと濃い体型のナイスガイエディが結構好きです。B級アクションやサスペンスで気が付くといつのまにか画面に登場しているバイプレイヤーかな。追悼をこめて、久しぶりに「レザボアドッグス」を観ましょう。
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2006年01月04日

コーヒーが自由を歌う

“自由という名の珈琲 LIVRE”が本日解禁!店内カップでも豆売りでもお楽しみいただけます。
               喫茶店
年末年始一昼夜にわたる、イタリアンローストより深い深い熟考の末、開発されたプロトタイプです(嘘)。ブラジルに、グアテマラ、コロンビア、モカマタリをそれぞれ焙煎度合いを変えブレンド。苦味と酸味、整合(ハーモニー)と不整合(不協和音)が複雑に絡み合う四重奏です。これが定番になるか否かは店主TIPOの気まぐれ次第です。モトネタ(サンプリングソースともいう。ちなみにブレンドは勝手に“REMIX”と呼んでます)のナラ・レオン“ナラが自由を歌うO CANTA LIVRE DE NARA”を聴きながらどうぞ。ご注文の方のお客様にはもれなくCDをおかけいたします。そんなんいらんか?
               喫茶店
あ、何か今日は普通の自家焙煎店主の日記みたいですね。くそ!へそ曲がりなパンクとしては許せない。ということで後半は話題を変えます。
               喫茶店
年末年始、久しぶりの映画館訪問で3本の映画「Mr.&Mrs.スミス」「キングコング」「ロード・オブ・ウオー」と出逢いました。何か映画好きの高校生のような定番セレクトですね。結果ははどれも並かな。正月的に普通に楽しめました。
               喫茶店
素晴らしい映画と出逢った時、映画館の暗闇での時間が永遠に続くことを考えます。時間は絶対的であると同時にどこまでも主観的なものさしです。つまらない映画の2時間は椅子に縛り付けられた拷問です。ひたすら続く責め苦に堪えながらあまりにも遅い時間の歩みを呪います。(なんでつまらぬ映画ほどあんなに長いんでしょうか?)心から「もっと光を!」と外の光によって解き放たれ、現実に戻ること望みます。対極にこの暗闇での密かな時間が永遠に続くことを望む映画もあります。あまりにも心地よく闇に包まれ、光の訪れを拒否いたします。瞬間が永劫に継続する。もちろん時間というものは非常なものあり、どんな物事にも必ず終わりが存在します。そして、終わった世界を名残惜しく思い、愛しむ。そんな時、すぐには現実世界に戻ることはできません。残念なことにそんな映画には年に1回出逢えるか否かという程度です。毎回裏切られながらも、暗闇の永遠のために映画館へと足を運びます。映画館で永遠を夢見ます。
posted by 焙煎師TIPO at 13:35| Comment(1) | TrackBack(0) | 映画