2006年11月21日

トゥモローワールド


『トゥモローワールド』
いろいろと文句も多い映画でしょうね。物語のトーンが暗く救いがない、やたらと人が死にすぎる、痛い描写、画面情報量過多で混乱気味などなど。興行的にも絶対こけます!でもすごい映画です。なぎ倒す力技の演出力はすさまじく、尺は2時間足らずなのに画面から迸る臨場感にくたくたに疲弊されました。
個人的に監督のアルフォンソ・キュアロンとは相性抜群のようです。ハリー・ポッターは無視するとして、世間的には大ゴケの『大いなる遺産』は生涯掛けてフェティシュに愛します。『天国の口、終りの楽園』も同じ。そう、一生のついていきたい監督です。

主演のクライブ・オーエンは最初から最後まで出ずっぱり。基本的には彼の視線で主観的に物語は進みます。主人公の感じた痛みや悲しみを共に感じるしかありません。全身ぼろぼろ汚れ、傷つき、疲弊していきます。観客はどこにも逃げられません。確実に意図的なこの演出をどう感じるのかが評価の分かれるところでしょう。

ワンカットで撮られたカーチェイスや戦闘シーンがすさまじい。主人公と共に体験するかのごとくカットを切ることなく体験させます。映画の最も基本的な文法がモンタージュです。カット割によって、場面を意図的に演出し、虚構の世界を創造します。従来であればカットを割らないオリジナルソース(フィルムに焼き付けられた画像)は嘘の無い現実であると定義づけられたかも知れません。しかしテクノロジーの進化により後工程での処理(修正)が当たり前になり、目の前にある映像の何がリアルで何が嘘なのかすら区別が一見して不可能になりました。果たしてワンカットのこの映像が本当に現実なのかは疑問ですが、リアルであることは事実です。対岸の火事の様に映画館の席にいながら、架空の痛みすら感じる光景です。

正月映画を控えているこの微妙な時期に公開されたこの映画は間違いなく映画館から闇に葬られ、早々にDVD化され何とか資本回収の策に流されるのは必至!
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2006年10月30日

スネークフライト

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タイトルがすべてを表す突っ込みどころ満載の超B級映画。スクリーンを眺めながら全編ひたすら「何で蛇やねん?」と突っ込むしかなく、真剣にプロットや演技を鑑賞すると凍りつきます。でも結構この手の映画が好きです。絶対映画館に金を支払ったことを後悔する事必至のB級サスペンス、ホラー、アクションなどに時々散財したくなります。時折、身体に悪そうなジャンクフードに惹かれると同じ。大阪の映画館では絶対天六のホクテン座向きの映画ですがなぜか一応メジャー館の三番街シネマ(←もっとも『グエムル』などもココでしたね)で公開。ユウラク座はおっさん向けのB級作品を徹底してセレクトしている勇気ある場末感一杯の映画館です。近日公開『氷の微笑2』もココ。場所判断でどんな出来の映画か検討が付きますが、怖いもの見たさで結構楽しみです。
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2006年10月26日

シングル8

今日コーヒーともカフェとも、地球の裏側のブラジルより遠く関係のないネタです。

富士フィルムの8ミリフィルム(シングル8)の製造および現像サービスを打ち切ることが決定されたようです。先日、映画『虹の女神』に絡めて8ミリ映画の話を取り上げましたが、今日合せた様に夕刊のコラムで知りました。

店主は世代的には家庭用ビデオがまだまだ高価で一般的なメディアでなかった頃の人です。近所にレンタルビデオ店はありましたが、レンタル料が1000円程度(もちろん1本)で、元を取るために借りてきたビデオデッキを2台接続して無理無理ダビングしたものです。ベータとVHSがしのぎを削り、派閥戦となっていました。ちなみに実家はベータでその後、買い替えを余儀なくされました。

当時、自主制作でビデオを使用している人は皆無に近く、8ミリフィルム世代の末期です。8ミリフィルムもシングル8派とスーパー8派に分かれましたが、カメラの機能性で圧倒的にはシングルが多かったかな?シングル8の撮影機のマスターピースが先日紹介したZC1000です。とはいっても、PC1台で自由に映像が作成・編集可能な現在から見ればアナクロすぎる代物ですけどね。

記事によると来年3月で販売終了、08年9月で現像停止とのこと。店主が大学時代、授業よりもコーヒーよりも音楽よりも夢中になっていた8ミリ映画の確実な終焉……。時代に取り残されたメディアの最期を思うと少しだけ切なく、時間の流れの無情さを感じます。

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2006年10月23日

サンキュー・スモーキング

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サンキュー・スモーキング

宣伝によると「その男、話術で世間を煙に巻く」映画だそうです。まさしくそのまんま、タバコ業界のスポークスマンが口先だけで世間を渡るお話です。

直球喫煙がテーマ映画でありながら、喫煙シーンが一度スクリーンに出てこないとういう喫煙行為を机上の空論に変換した潔さがすごい。あたかも海の向こうの知らない国の戦争が決して火の粉が実際降りかかることが無いかのように、机の上で善悪を議論します。その昔、タバコと映画は極めて親密な関係でした。フランス映画でジタンやゴロワーズを覚え、くわえタバコで紫煙を煙らす銀幕の俳優に憧れたものです。それが今やタバコを吸うのは異常者かヨーロピアンしかいないとのこと(劇中の台詞より)。アメリカの極端に偏った考えが伺えますね。

決して喫煙を推奨する映画でも、嫌煙者推薦の映画でもありません。ロバート・デュバル、ウイリアム・H・メイシーなどの曲者俳優で脇を固めタバコをネタに狸と狐の騙し合いを知的に楽しむ映画かな?
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2006年10月16日

ZC1000

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映画『虹の女神 Rainbow Song』は紛れも無いZC1000の映画です。

それはフジカ社製(ビデオじゃない)8ミリカメラの機種番号であり、8ミリカメラの最高峰であり20年前ですら二十数万円した究極の機械です。この符号はある種の人にとっては大きな意味を持つものです。制作の岩井俊二、監督の熊澤尚人を始めとして過去に自主制作映画にかかわった人たちにとってどこまでも青く、懐かしく、甘く同時に苦い符号です。劇中でも機種番号をあからさまにクローズアップで映し出すシーンが!おお、何というストレートな!

すべての過去は恥ずかしいものである。
私が常々唱えている持論です。過去は恥ずかしく苦々しいものです。そして過去が羞恥の対象となる限り、人は少しづつであっても前へと変化していることの証となります。特に人生で最も青い頃の記憶ほど恥ずかしいものはありません。

久しぶりにZC1000の御姿をみました。劇内でも大人になった自主映画くずれが歓喜するシーンがあります。そのまんまの気持ちです。そしてその姿に伴う記憶は「青」以外の何者でもありません。そう、大学生だったの記憶です。甘く切なく懐かいと同時にとてつもなく恥ずかしく思い出です。回想シーンは波動となって記憶をせめぎます。おおお、エディターよ!スプラサーよ!(共にフィルム編集機材)。もはや冷静にこの映画は観れません。自らの思い出とスクリーンの虚像がぐちゃぐちゃになって虚実入り混じってしまいます。でもでも冷静に客観視してみれば、一般の観客はこの映画をどう感じるんでしょうね。

まさしく青春の青い空気を体現する役者がいます。(残念ながら賞味期限付きの期間限定ですが)全身青臭いに臭いに満ちた存在感で老いも若きも観るものを打ちのめします。例えば少し前の妻夫木聡でありガエル・ガルシア・ベルナール。現在、ジャンルレスで引っ張りだこの上野樹里はまさしくそんな存在です。青臭いお話が彼女ほど似合う女優はいないのでは?確かにいたね、こんな女の子!と思わせる存在感です。

デティールにどこまでも個人的思いが先走ってますね。でも原作の桜井亜美、インスパイヤーされたという種とも子の主題歌は全く興味なし。そんな映画です。
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2006年10月15日

ブラックダリア

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ジェイムス・エルロイの傑作『ブラックダリア』をブライアン・デ・パルマが映画化というだけで映画ファンとしては期待してしまいます。

   ……が、評価はかなり厳しいですね。

意図的に古い触感のもたっとした粗い画質、古典的なワイプディゾルブ、フラッシュバックなど古典映画の空気の再現が感じられます。そしてゆったりとしたヒッチコック的なクラシックな演出も確信犯です。でも所々にデ・パルマ的な過剰なスローモーションのサスペンス演出と悪趣味が隠されています(もっともデ・パルマファンは過剰なギミックの暴走を苦笑いしながらも毎回楽しみにしているかな?)。

空回りのひとつの原因は脚本。
現実には迷宮入りしたブラックダリアの謎解きよりも事件を知ったことで途を踏み外していく者の物語です。結論を急ぐ、なんか強引は展開なんですね。とってつけたような真犯人の提示と結論、見せすぎた演出は情感が涌きようも無く宙ぶらりん。

もうひとつの原因は役者。
ジョシュ・ハートネットの薄っぺらい演技を筆頭に二大女優もいまいち振るわず、全員一丸となって猿芝居合戦。そんなん見とうないちゅうねん!

何か一つでもいいとこ見つけて誉めたいのですが、立ちはだかった困難さを憂い、自分が極悪人になった気がして悲しい。あああああ、疲れた。
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2006年10月02日

カポーティ

フィリップ・シーモア・ホフマンの独壇場です。実物とそっくりで見事な演技です。こちらが本物のトルーマン・カポーティです。

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でもでもははは!久しぶりに映画で寝ましたよ。前半のまったりさ加減と疲れが気味地良く眠りへと誘い、無条件降伏。やはり映画館の梯子が困難になりつつあるようです。連れ合いによるとあの声としゃべり方が眠りへと誘うのでは?とのこと。これが意図された演技ならなお恐ろしい。ということで評価不能で睡眠ポイント獲得!
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2006年09月29日

「あ、そう」

ロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロフ監督作品、イッセー尾形が昭和天皇を演ずる映画『太陽』です。

  たしかにすごい映画です。

日本を描いた映画でありながら絶対に日本主導では製作できない異色作です。よく全国公開できたものです。天皇ヒロヒトの太平洋戦争末期から終戦後マッカーサーとの会見までの生活を描きます。史実に沿った物語なのか?全くの虚構なのか?でもそれはどうでも良いことで監督はロシア人ですが、ネイティブが観ても違和感のない描写です。

イッセー尾形の演技が本当に見事!役者は役柄に近づく(なりきる)タイプと役柄を自分に近づけるタイプに分かれますが、彼は明らかに前者で演じたキャラクターを知っていても、素顔のイッセー尾形の顔が曖昧です。ある時は舞台のスタンダップコメディアンの様のように、ある時は苦悩の悲劇俳優の様に演じます。繰り返される「あ、そう」というオフビートな台詞で意図的にリズムを外した対話が交わされます。果たして脚本通りなのか?アドリブなのか?映画終演後は思わず「あ、そう」と身近な人に合いの手を入れそうになります。

アレクサンドル・ソクーロフの『エルミタージュ幻想』は90分ワンカットの化け物のような劇映画でした。長回しも程度ちゅうもんがあるやろ!全くえげつないオヤジです。
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2006年09月23日

プレミアムスクリーン

昨日開業したTOHOシネマズ なんばです。
オープン記念としてプレミアスクリーンが1000円(通常2400円)に、事前にWEB予約で席を押さえ早速物見遊山へ出発!南街会館世代としてはマルイと一緒になった商業ビルを見上げると不思議な気分です。共有ホールから階上へ上がり、バブリーで無機質なエントランス(仰々しい専用自動ドアが迎えてくれます)抜けると赤と黒を基調とした専用ラウンジへ。チケットにはドリンクかポップコーンが付いてきます。席数40席とミニシアター並ですが、音響は抜群で、リクライニングシートに室内履きスリッパとブランケットのサービスといった過剰な心遣いで迎えてくれます。場末のションベン臭い映画館の1800円と比較すると決して高くないサービスかな?少しだけセレブな選民意識を刺激されたい方、相方に見栄を張りたい方にはぜひお奨めです。男性なら初めてのデートに意中の彼女をタキシード姿でココへ招待すると「ふふ!わたしもこれでちょいセレブよ!」と喜んでくれること請け合い?

ちなみに観た映画は何も語りたくない

  『X-MEN:ファイナルディシジョン』

です。前作までにそれなりに作りこんだキャラクターをボコボコと簡単に葬り去り、バタバタ人を殺し、挙句の果てに無理矢理シリーズを終わらせたとしか思えません。全くどうしようもない映画で記憶から葬り去りました。
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2006年09月20日

トランスアメリカ

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タイトルは「アメリカ横断」の意味で不可解な父(母)と子がアメリカを横断して東から西へとボロ車で旅をする話です。身体は男だけれど心は女という主人公を紛れも無い「女優」が演じるという屈折したキャスティングが憎い映画です。フェリシティ・ハフマンが見事でどうみても男にしか見えない!でも性同一障害や性転換といった多様なセクシャリティのテーマばかりが強調されていますが、これは正真正銘のロードムービーです。説明的な描写を省き、砂臭い荒涼たる風景と旅の過程での人の変化に主軸をおいています。旅先で出逢った意味深不可解な人物と何かしら後半発展があるのかと思えば、全部やりっぱ!これぞ旅です。まさしく旅の恥はかき捨ての言葉通り。そして旅を経て人は変わります。西へ向かうアメリカの風景と奇妙な親子の顛末を暖かく見守るロードームービーの傑作です。それ以上でもそれ以下でもない、(決して奇をてらった訳ではない)シンプルな旅の映画です。偏見を捨てて一緒に旅して下さい。
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2006年09月08日

正しい『マッチポイント』鑑賞術

古巣ニューヨークを離れロンドンロケ(←これまでは「アメリカの夜」なインチキ風景のみ)、71歳の齢にして新境地開拓、長いウディ・アレンの映画(←といっても124分)、サスペンスに挑戦などなどいろいろな下馬評が飛び交っていますが、この映画の正しい鑑賞方法はただ1つ!極めて簡単です。

 エロいスカーレット・ヨハンソンの唇(もしくはそれに付帯するムチムチのボディ全般)

を見る(観るではなく)ことです。サスペンスだからといって犯人を追う必要もなければ、くどい位にバックに流れるオペラに耳を傾ける必要もありません。純粋に「唇」を見てればよろしい。2時間分、それだけで十分元は取れるはずです。

しかし『ゴーストワールド』(←大好き!「ケ!」と自意識過剰で世界を斜に観る主人公はまるでかつての自分)の頃はこんなにエロかったけ?人は成長するんですね。公開を控えているジェイムス・エルロイ原作・ブライアン・デ・パルマ監督作品『ブラックダリア』が楽しみです。同性異性問わずもっともっとエロく毒付いて欲しいものです。ちなみに個人的には余りにもフェロモンぶりぶり出し過ぎで毒に当たりそうなので好みではありません。

ほぼ毎年公開されるウディ・アレンの映画を観ることは極めて当たり前の日常的な行為です。大きな当たり外れがなく、もはや生活の中にしっくりと入り込んでいます。70歳を超えても決して隠遁することなくいつまでも女のケツを追いかけた映画を撮り続ける恐ろしいじいちゃんです。さてあと何本の映画を観ることができるのでしょうか?
  
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2006年09月05日

グエムル 漢江の怪物

アホアホ映画です。
それを前提に楽しみに行くのがB級映画好きです。

WEBのレビューではかなりボロ糞ですが、結構いけます。結構楽しみました。
シリアスなパニック映画なのに変な笑い満載で確信犯的にリズムを外しています。でも典型的な怪獣映画として、娯楽作品としても成立しており、そんなひどい映画ではないはず。

いくらでも深読みも可能です。初代の『ゴジラ』が明らかに「核(兵器)」への恐怖のメタファーであった様にこの映画の怪獣は露骨な「アメリカ」への揶揄の様に感じたのですが??韓国の政治・経済状況、米韓の力関係には無知ですが、何かかなり露骨に感じるんだけどね。その証拠に怪獣のアップのショットで尻尾の裏にちゃんと「MADE IN USA」とありました(当然嘘!)。でも実際、怪獣を生み出したのは在韓米軍の毒物垂れ流しであり、情報のミスリーディングと称して内政をかき乱したあげく、大げさな最終兵器を他国に導入するアホアホアメリカ万歳という感じです!そのアメリカの象徴であるアホアホ怪獣に向かって、断絶された韓国ファミリーが一致団結して、人民のシュプレプヒコールの中、火炎瓶投げて、ゲバ棒でどつき、矢を撃ち、戦う映画です。これって深読みしすぎ?

動物パニック映画の王道『JAWS』の様に、前半怪獣の姿を映さず、観客を引っ張るタイプの映画ではありません。開幕15分でたいした説明も無く、いきなり怪獣は暴走します。この潔さ!でも後半が少々だれるのでもう15分切るとテンポ良さは抜群なんだけどね。

個人的には韓国俳優で唯一名前と顔が個別認識できるぺ・ドゥナを眺めていました。彼女のへちゃむくれさ加減が結構好きです。

もう一度!侮れないアホアホ映画です!
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2006年08月30日

カクタスジャック

公開中のメキシコ映画『カクタスジャック

あまり事前にネタを仕入れずに飛び込みでメンズデーのテアトル梅田へ。
男気ムンムンのかなり汗臭い映画館(ほぼ9割が男)です。

結果は大当たり!

上のスティルを見ていたのでもっとシリアスでグロい心理劇か思えば全くのコメディでした。確信犯的にリズムを外し、本筋よりも脇道のディティールを執拗に書き込むタランティーノ直系の脚本です。一応、間違えられた誘拐劇なのですが、多分観ないと説明しにくい映画です。そして結構いけます。キャラクターすべてがおかしくパラノイアック!冒頭、状況説明も無いままに笑えないジョークの語りから始まるところなどまさしくタランティーノ節!そして『タクシードライバー』トラヴィス(ロバート・デ・ニーロの役)の似ていない物真似や『男と女』のテーマがスペイン語で唐突に流れたり超ベタネタ連発です。すさまじく断続的な苦笑継続映画です。

いやあ、見事にはまりました!☆4つでTIPOGRAFIA推薦映画です!
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2006年08月29日

ユナイテッド93

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2001年9月11日ユナイテッド93便の当事者の視点から再現した「劇映画」です。
残された関係者の声を取材したり、実際のフッテージを使ったドキュメンタリーではありません。
(ユナイテッド93便の実際の生存者なく)事実は藪の中であり、機内の人間模様と管制塔などの関連機関でのドラマを役者を使ってをリアルに再現したあくまでも“フィクション”です。

最初に問うべきは、なぜこの紛れも無い事実を映画化したのか?

    自己憐憫?

    露悪趣味?
 
    事実の美化?
  
    真実の隠蔽?
    
    自国の屍すらを売り物にする逞しい商業主義?

    単なる監督の歪んだ妄想?

可能性は無限です。5年時を経過しながらも、まだまだ生々しい事実をなぜ瘡蓋を剥がす様に金儲けの手段(商業映画)にして公開するのか?全く理解できません。

純粋に娯楽映画として見れば、ドキュメンタリータッチの生々しい描写が無駄なく、観客を物語に引き込み、退屈はさせません。
手持ちカメラの多用、飛行機の外観(機影の空撮俯瞰映像)など現実にはありえない映画的カットを全て封印した室内劇の選択、無名の俳優中心のスター至上主義の否定(さらにクレジットには“AS HIMSELF”表記が極めて多いことに驚きます)、事実に沿ったリアルタイムでの進行、ハリウッド的ハッピーエンドの否定などなど、劇映画ながら、かなりの足枷でストイックに描写した監督の手腕は評価できます。

でもあくまでも“タッチ”であって所詮は絵空事であり、残された電話の通話記録やフライトレコーダーなどの断片からつなぎ合わされた擬似現実です。

近日公開のオリバー・ストーン『ワールドトレードセンター』など“911”関連の映画が続きます。5年という歳月が傷が癒えるのに果たして長いのか?短いのか?ネタ切れハリウッドの苦し紛れの自虐ネタとならぬことを祈ります。
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2006年08月21日

スーパマンリターンズ

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78年に公開された第一作からすでに四半世紀の時が流れているのですね。テクノロジーと新たなる旬のキャストでSAGA第二部の堂々開幕です。前シリーズを観た世代の人にも違和感の無いスーパーマン役のブランドン・ラウス、レックス・ルーサー役のケビン・スペイシーやマーロン・ブランドの声と姿をフォルムから再利用したり凝ってます。もちろんアクション、飛行シーンなどの描写も格段に進歩してます。

すでに過去の遺物となりつつある平面のコミックを実写映画に転用しようとするとどうしても世界観に歪みが生まれます。

 なぜスーパーマンはあんなも恥ずかしい格好をするのか?
 (そもそもあれは着脱可能な服なのか?)
 
 なぜ誰もクラーク・ケントが正体に気がつかないのか?
 (その差は眼鏡のみでどう見ても同一人物)

と定番の突っ込みどころ満載です。今回屈折したブライアン・シンガー監督ですので少し覚めた目でヒーローをとらえ、ゲイ感性で執拗に舐めまわしています。 

しかし長い……。2時間45分ですよ。上映時間を知らずに映画館でチケット買って引きました。まあ、実感時間はそんなには長くは感じなかったのですが、さすがに所々はダレます。単独の娯楽作品として楽しめるものの、新たなるこれからの物語のプロローグという感じで、ストーリーもいささか中途半端かな。「ああ、そうだったのね。でもいつ?」という感じ、詳しく書くとネタばれになるので、ぜひ劇場で観て下さい。まあ、普通に楽しめます。
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2006年07月19日

美しい人

現在公開中の映画『美しい人』です。

ロドリゴ・ガルシア監督の『彼女を見ればわかること』『彼女の恋からわかること』と同様決して派手な映画ではないのですが大好きです。

原題“nine lives”の通り9人の女性の人生の断片です。
タイトルは劇中の台詞にもある「猫は9つの命を持っている」ということわざにも繋がっています。邦題はいかにも女性客を狙いすぎ!

10人の女優が演じる女性の物語です。(たとえ長短はあれど)無限とも思える長い人生のわずか10分強の物語です。それまでの生きてきた時間とこれからの時間の合間に存在するわずかな隙間。観客は人物の語る言葉から全てを想像するしかありません。決して多くない、わずかな言葉。往々として人生なんてそんなものでしょう。毎日の生活にドラマチックな台詞やト書きが脚本の様に用意されているわけでもありません。人はその瞬間の空気を感じて生きるしかありません。演じる女優もグレン・クローズ、ホリー・ハンター、ダコタ・ファニングなど堅い演技派(うまい!)です。結構痛い話が多いのですが、その意味では極めて生々しい映像かな。

そして全てのシークエンスがワンシーンワンカットです。でもカットの繋ぎを意識させません。気が付くとワンカットだったという感じです。余りにも自然!例えばブライアン・デ・パルマの様にいかにもワンシーンだぜぃ!という自慢気なテクニックではありません。当たり前のことですが、日常の視覚にはカット割りはありません。説明的なクローズアップも切り返しも、クレーンの俯瞰映像もありません。そして(固定でなく)ステディカムの手持ちカメラが人間の視点に極めて近く、空気感を捉えます。求めている物語(人生の当たり前の断片)を具象化する技術としては極めて的確な方法。

9つの物語は微妙にリンクしています。登場人物が重なり、映画全体でタペストリーの様な世界観をつくっています。その点ではゆるゆるの群像劇とも言えます。

良質だけれども、決してメガヒットしないこの手の映画はすぐに上映終了となります。ご覧になる方はお早めにどうぞ!




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2006年07月01日

悪夢

トラウマに近い悪夢のような映画『ゾンビ』です。シリーズ第2作(日本公開では第1作)以来、ひたすらゾンビそのものへ恐怖よりも、世界の終わりの逃げ場(希望そして未来)の無い世界観に打ちのめされました。以来、生傷のように時々蘇ってきます。

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そして繰り返して『ゾンビ』シリーズの夢を見ます。毎回ストーリーや設定は異なりますが、定期的に公開されるシリーズモノの夢です。基本的には逃げ道の無い閉塞感で一杯の終末の世界です。ある時は樹の上にゾンビに追い詰められ、逃げ場を失い、まんじりともせず夜を明かします。昨夜、久しぶりに寝起き前の夢でうなされ、起きてからも現実に戻れませんでした。ニューバージョンです。パッと見た姿からはゾンビなのか人間なのかがわからず、気が付くと襲われているのです。周囲の人間が知らぬうちに見た目は変わらずゾンビ化しているのです。パラノイアックな厭世観の濃い、重い空気で夢なのに死にそうになりましたよ。ほんまに、なんちゅう夢を見るんや!寝とる方が疲れるやないけ!
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2006年06月27日

映画は誰のもの?

六本木ヒルズの事件以来、しばしば問われているのは、

       会社はいったい誰のもの?

という点です。果たして代表取締役の私物?それとも株主?社員?新聞やニュース番組でいつも問われています。
そして今回のテーマは映画『M:i:V』は誰のもの?


映画の選択基準として作家主義と呼ばれるものがあります。基本的には監督買いで、その人の作品であれば、内容や俳優に拠らず必ず観に行くという、ディープな映画マニアに多いパターンです。でも一般的には、テーマやストーリーといった内容で選ぶ、好きな役者で選ぶ、話題性で選ぶなどの方が多数派かも知れません。そして映画というアートはいったい誰のもの?映画は小説や、絵画、写真ほどパーソナリティ(個人)が明確ではありません。映画は必ず複数による団体戦だからです。演出した監督?演じた役者?金を出した映画会社の製作者?それとも脚本家?1本の映画には余りにも多くの人が絡みすぎて、出来上がった作品がいったい誰のものか到底断定できません。

でも断言できるのはこの映画はトム・クルーズのものです。トムによるトムのためのトムの映画です。映画というよりトムのプロモーションフィルムのようなモノです。そのためなら監督を2名程(デビッド・フィンチャーとジョー・カーナハン)馘首しても大丈夫!果たしてここまで映画を私物化していいのでしょうか?でもこの人の恐ろしいところは、これだけナルシスティックに世界観を押し付けながらも、映画としては娯楽としては十分に楽しめるという点につきます。2時間強、特に前半の恐ろしいまでのテンポの良さと構成美は確かにすごい。これは果たして監督の腕なのか?脚本家の構成力?編集の技?はたまたトムのプロデュース力?真実は全くわからん!でも夏休み映画としては誰でも楽しめる娯楽作品に仕上がっています。さあ、皆様もトム・クルーズを見に行きましょう!でもトム・クルーズを見たくない人は絶対観にいかない方が賢明でしょう。そんな映画です。
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STAY

公開中の映画『STAY』です。

映画館で配布されているチラシの《STAY攻略ポイント》によると

 なぜ、サムのズボンの裾は短いのか?

その他、数項目の疑問が判れば、謎が解けるそうです。
サムとはユアン・マクレガーの演ずる精神科医です。確かに彼のズボンの裾は短い!でもなぜ?実は店主自身、スーツのズボンが極端に短いことで有名でした。若い頃、気分はモッズでパンクなサラリーマンだったため、裾はくるぶしが完全に出る位の短めの丈で4センチ幅のダブル(なぜ4センチなのか??)と決めていました。そして“CAFE BLUE”なステンカラーコートを前ボタン留めずになびかせていましたよ。今だから笑えるとても恥ずかしい過去です。さて、ユアン・マクレガーのズボンの丈は負けないくらいに短く、グレーのツイードジャケット、キルティングのジャケットなどブリティシュでモッズなファッションいっぱい!ひたすらそんなディティールが妙に気になった映画……。

『ジェイコブズ・ラダー』『アザーズ』『シックス・センス』『ジャケット』系の映画です。いささか食傷気味で使い古されたオチですが、決して嫌いではありません。個人的には現実崩壊系映画と呼んでいます。思わせぶりで計算尽くされた映像とカットのつなぎがスタイリシュな映画です。断言します!こけます!興味のある方はお早めにどうぞ!当然のことですが、店主のようにサムのズボンの裾を見つめていても謎は解けません。あしからず。
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2006年06月11日

インサイドマン


  『インサイドマン

微妙な映画です。大手を振ってお奨めはしないのですが、決して悪くはありません。スパイク・リーが娯楽作(エンターティメント)を?という触れ込みでしたが、蓋を開けるとやはり“A SPIKE LEE JOINT”な香り一杯です。僚友デンゼル・ワシントン(a.k.a.マルコムX)に音楽はいつものテレンス・ブランチャードと堅い所は押さえています。

全般的に911以降のアメリカのひずんだ空気が一杯です。周囲の同国人を信用できず、全てがアルカイダのテロリストに映る狂った疑心暗鬼な世界。人種差別やマイノリティーなど、混沌とした善悪の彼岸が蔓延しています。確信犯でしょうが、人質を初めとしたあらゆる登場人物が人種見本市のような設定となっています。ユダヤ、アジア、エスパニュール、ブラック、インド……。主人公の黒人ネゴシエイター、人種差別主義者の警官、白人女弁護士などセクトの対比と対立の中物語は静かに進みます。

ストーリー自体はまったりとした流れで基本的にはインサイドマン(銀行内の犯人)とアウトサイドマン(警察側)のコンゲーム(騙し合い)です。先が見えないので緊張感はありますが、少し長く感じます。情報が過多で緊張感が長時間維持しずらいんですね。もう20分切って2時間弱に収めれば絶対評価は上がりますよ。

クライブ・オーウェンはほとんど素顔を見せていないのに存在感は抜群。デンザル・ワシントン、ジョディ・フォスター、ウイレム・デフォー、クリストファー・プラマーと映画好きの期待を裏切らないキャスティングの掛け合いも見所です。

posted by 焙煎師TIPO at 12:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画