2006年07月19日

美しい人

現在公開中の映画『美しい人』です。

ロドリゴ・ガルシア監督の『彼女を見ればわかること』『彼女の恋からわかること』と同様決して派手な映画ではないのですが大好きです。

原題“nine lives”の通り9人の女性の人生の断片です。
タイトルは劇中の台詞にもある「猫は9つの命を持っている」ということわざにも繋がっています。邦題はいかにも女性客を狙いすぎ!

10人の女優が演じる女性の物語です。(たとえ長短はあれど)無限とも思える長い人生のわずか10分強の物語です。それまでの生きてきた時間とこれからの時間の合間に存在するわずかな隙間。観客は人物の語る言葉から全てを想像するしかありません。決して多くない、わずかな言葉。往々として人生なんてそんなものでしょう。毎日の生活にドラマチックな台詞やト書きが脚本の様に用意されているわけでもありません。人はその瞬間の空気を感じて生きるしかありません。演じる女優もグレン・クローズ、ホリー・ハンター、ダコタ・ファニングなど堅い演技派(うまい!)です。結構痛い話が多いのですが、その意味では極めて生々しい映像かな。

そして全てのシークエンスがワンシーンワンカットです。でもカットの繋ぎを意識させません。気が付くとワンカットだったという感じです。余りにも自然!例えばブライアン・デ・パルマの様にいかにもワンシーンだぜぃ!という自慢気なテクニックではありません。当たり前のことですが、日常の視覚にはカット割りはありません。説明的なクローズアップも切り返しも、クレーンの俯瞰映像もありません。そして(固定でなく)ステディカムの手持ちカメラが人間の視点に極めて近く、空気感を捉えます。求めている物語(人生の当たり前の断片)を具象化する技術としては極めて的確な方法。

9つの物語は微妙にリンクしています。登場人物が重なり、映画全体でタペストリーの様な世界観をつくっています。その点ではゆるゆるの群像劇とも言えます。

良質だけれども、決してメガヒットしないこの手の映画はすぐに上映終了となります。ご覧になる方はお早めにどうぞ!




posted by 焙煎師TIPO at 12:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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