昨日、北堀江シャムアなど大阪の定期巡業中の中川ワニ氏がTIPOGRAFIAに遊びに来ていただきました。昼過ぎに突然電話があり、ふらりと登場!重い梅雨空の中、閑散としていた店内が一気にお客様で溢れ、夕方に去ったとたん客脚がドン引きしていくなど、まるで座敷童子のようなお人です。そういえばコーヒー教室もいつも盛況、きっと人を呼ぶ天性の力を持つ人なのでしょう。お店関係の人にとっては一店に一人大切に神棚にでも置いておきたい!
昨日も長々と話していましたが、話題は基本的にコーヒーと音楽。
最近のお気に入りのディスク、レコ屋、コーヒー屋、旅、生豆、焙煎とどこまでもとりとめなないけど、深い含蓄に満ちた禅問答です。まるで禅の老師が若い弟子に投げかけたアブストラクトだけど物事の本質に繋がる根源的な問いに四苦八苦しながら考え、答える気分です。ワニ式コーヒー教室でおなじみの具体的な各論に関しては何も述べず、総論を感覚的に理解させる手法です。初めて受講した時、こんなにも多くを語らないけど、多くを伝える教室があるのかと、驚きました。(以来、結構あちらこちらで受講しています)
コーヒー業界はこだわりと自己執着とうんちくに満ちた世界です。(いささか失礼な言い方ではありますが)中川ワニ氏のように、こだわるけど執着しないコーヒー屋は本当に貴重です。コーヒーに対する味覚の正確さ(教室では十数名淹れたコーヒーの4回にわたって、個々の変化を的確に指摘します!)と底知れない深い愛情を持ちながらも、決して自己を押し付けません。ここらへんがみんな素直にワニ氏のコーヒーに魅かれる理由なんでしょうね。こうして誰かの話を聞いていると、素直にコーヒーを煎ってみたくなります。コーヒーを淹れてみたくなります。純粋にコーヒーを楽しみたくなります。
そしてJAZZ。音の守備範囲は微妙に重なります。毎回、教室へ持参しているディスクを聴かせてもらうが楽しみです。いつもワニ好みの新ネタを仕入れて、翌日にはレコ屋へと駆け込みます。今回も果てしなく(素人は付いていけないような)マニアなネタ話を堪能しました。
中川ワニ氏は夕方、カウンターで同席していたお客様の案内で近所のパン屋とたこ焼き屋で粉モンを堪能して旅立っていきました。静かな思索に素に満ちた敵な午後でした。こんな午後もあるのですね。