「2階には何があるんですか?」
よく聞かれます。
答えは自宅です。教室などのイベントの時は開放されますが、普段は単なる倉庫として乱雑にモノが積まれています。元々、2階にも席を増設したり、ギャラリースペースなんかにもできるんじゃないかしら?と野望はあったのですが、独り営業体制の為、完全中座状態です。
階段の踊り場の上、窓の脇にこのオルゴールはかかっています。店舗として改装前からあったものです。以前は扉を開けると、オートロックと配線がつながっていたようで、自動で音楽を奏でたそうです。果たして何の曲が流れたのでしょうか?実は聴いた事がありません。工事の時、接続を切ったため現在はシステムが階段上で孤立しており、
鳴らないオルゴール
となりました。音を奏でるべきモノが沈黙を余儀なくされるのはどこか不自然で悲しげなものです。世界から繋がることなく、孤立したシステムは極めて不安な存在です。傍からは鳴らない音をひたすら想像するしかありません。ひたすら聴こえない音を心で聴くしかありません。これって、悲しい話だとは思いませんか?
他にも以前の家主(故人)の痕跡はいたる処に残っています。というより店主自身はこの家で生活しながらも、未だ借りてきた猫の気分です。さすがに枕が変わって寝れない状態からは脱しましたが、必要最小限のモノ(主にCDと一部の服)しか持ち込んでいないため、長い長い旅行の気分です。東京生活の1年間もそうでした。ここではないどこかに自分は属しているはずで、いつかは其処へ帰るのだ!という感覚がありました。でもどこに帰るのか?帰るべき場所はココ(TIPOGRAFIA)にあるはずです。