2007年06月30日

おきばりやすぅ

先日観た映画『舞妓Haaaan!!!』以来、“おきばり”づいています。

    「おきばりやすぅ」

映画の中で度々繰り返される台詞です。
スクリーン越しに刷り込まれた台詞は言霊と化して、日常会話も支配します。非京都人の脚本家が京都弁を的確に表す言葉として執拗なまでに確信犯的に使用したに違いありません。その妄執はもはや嫌味の域に達し、「君、茶化しとるんけ?」と突っ込みたくなります。

しかしながら……。

確かに日常意的に使います。

気が付くと無意識に、別れ際に連れに向かって声を掛けています。いつだったか、店に来た生粋の京都人である父は「まあ、お気張りやすぅ」と帰り際に言い残して行きました。自虐的に見れば、これは明らかに放蕩息子への親からの密かな叱咤激励なんでしょうね。

英訳すると単純に“GOOD LUCK!”となるはずなのですが、もっと微妙なニュアンスがあります。説明は微妙、歴史やコミュニティーに裏づけされた土着的な語彙です。映画の中でも「花街言葉と日常の京都弁は違うさかいに、その違いを覚えなはれ」とありましたが言葉とは本来そういうものです。ブラジルにおける“SAUDADE”が英訳、日本語訳も不可能は微妙なニュアンスを含んでいるのと同じです。そのTRIBE(共通の特徴・職業・趣味・利害関係をもつ集団)に属していない者がその集団を肯定したい、あるいは否定したい時はこれらの言葉を使用する傾向があります。芸人がいんちき中国語やいんちき大阪弁をネタにするのと同じ意味合いです。

まあ、いろいろと書きましたが、『舞妓Haaaan!!!』はまさにおきばりやすな映画です。それ以上でも、それ以下でもありません。非京都人による京都という「幻影都市」を力技かつハイテンションで描いた作品です。首都機能を東京に奪われた京都という町は単なる歴史のある地方都市でしかありません。そして歴史に培われたイメージという幻でしか、非京都人に対抗できません。
posted by 焙煎師TIPO at 12:32| 映画