2006年02月27日

日曜日の夜はレイトショーへ

月曜を定休日にして以来、多少心のゆとりができ日曜日の夜は映画へ出かけています。9時前後の上映開始のレイトショーは入場料が安く(1200円均一)、空いていて快適で、郊外型の商業施設併設のシネコンなので、開演までは館内で買い物も楽しめます。昨夜は「クラッシュ」。
            映画
すごい映画です。たぶんアカデミー賞の最優秀脚本賞は取るでしょう!本当に見事な脚本です。現代アメリカの人種差別と偏見をテーマとした決しいとっつきやすい映画ではないですが、あまりにも生々しくて、痛々しくて、切なくい映画です。かすかな希望もありますが、それ以上に絶望があります。でもそれは現代アメリカの現実です。ドル箱スターではないけど、素晴らしい役者たちの演技で静かにリアルに表現されています。
            映画
映画はいわゆる群像劇というスタイルです。ロバート・アルトマン「ショートカッツ」、ポール・トーマス・アンダーソン「マグノリア」、ボブ・ジラルディ「ディナーラッシュ」、タランティーノ「パルプ・フィクション」など傑作も多く大好きなジャンルです。ある時間、ある場所において複数の人物が織り成しがタペストリー(つづれおり)となる物語とでも言えばいいかな。映画では、前半、複数の主人公の行動をカットバックしてすすめながら、最終的にある時間・事件などに一点収束させるという構成を取ります。ストーリーの語り部としての構成力が必要です。観客としては最初、個々の主人公の関係が見えないため、少しもんもんとしながらも断片的な物語を進みます。そしてパズルのピースが最後に見事な一枚の絵となる瞬間(いわゆるオチ)に歓喜するのです!
            映画
私論では群像劇は最も映画的な構成であり、勝手に「神の見えざる視点」と呼んでいます。現実の人生も基本的には群像です。でも同じ時間や場所、事柄、空気を「誰か」と共有しながらも最終的には「自分」しか知ることはできません。どこまでいっても主観であり、絶対的な客観は存在しません。映画は神の見えざる視点(絶対客観)として物語を紡いでいくことが可能です。これこそ映画のもつ最大の力です。もちろん文学も同様の視点を持ってはいますが、どちらかといえば主観的描写(一人称)を突き詰める方が向いている気がします。
            映画
脚本・監督のポール・ハギスという人は前作の「ミリオンダラー・ベイビー」でもそうですが、リアリストというかニヒリストというか、かなり性格悪いですね。でも切れ者です。気に入りましたので、作家としては今後も新作には必ず付いて行きます。ちなみに「ミリオンダラー・ベイビー」でも前半の主人公と共有した動き・感情・躍動感を完全に封じるえげつない仕打ちを仕掛けています。今回も前半と後半と対比が基本にあります。主人公たちは望むものではなく、皮肉な現実に踊らされ変化していきます。人は簡単に変わるんですよね。この変化を固い役者の演技でリアルに表現しています。あまりにも痛くって、切なくって涙が出そうになります。
            映画
この映画は観終わってもハッピーにはなりません。爽快感で現実を忘れることもできません。でもそれは映画に何を求めるかによります。
          
posted by 焙煎師TIPO at 10:55| Comment(1) | TrackBack(1) | 映画
この記事へのコメント
ずっと前に「ショート・カット」で検索しても出てこず、あきらめていたら「ショート・カッツ」でした。ありがとう。もう一度見たかったのです。Tipoさんのようにたくさんの映画は見てないし、解説もできないけど、「ショート・カッツ」「ミリオンダラー・ベイビー」「存在の耐えられない軽さ」など、見終わったときの切なさと無気力感に癒される私は「クラッシュ」を是非見に行きたい。
Posted by ・・・むむっ at 2006年02月27日 20:52
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映画「クラッシュ」ポール・ハギス/監督
Excerpt:  映画クラッシュ観てきました。  ポール・ハギス監督は映画「ミリオンダラーベイビー」の脚本家で、初監督作品だそうです。  ストーリーは、というかロスアンゼルスで起こった事故でかかわった人々が多重的..
Weblog: スチャラカランナーの日々
Tracked: 2006-02-28 19:42