2006年01月17日

お客様の飲めないコーヒー

毎朝、焙煎を終えたらその日の豆のチェックを兼ねて自分のためにコーヒーをたてます。香りを売りにしているのにコーヒー屋の店主自身あまりは香りを楽しめません。嗅覚は恒常的な香りに対しては判断が鈍くなります。ずっと同じ香りの中にいるとほとんど変化を認識できません。そんなTIPOが唯一、香りを楽しむコーヒーがこの朝の一杯です。まだ暖房をつけていない空気がは冷たく肌をさします。照明の落とした店内は夜明けのぼんやりとした輪郭のように暗く、磨き上げられたカウンターにもテーブルにも静謐さが漂うのみです。お湯の沸くガスの音が音楽をかけていない店内に反響します。煎りたてのコーヒー豆を粉砕し、円錐フィルターにセット。いつもより少しだけゆったりと丁寧に湯を注ぎ、グラスポットに落ちる抽出液を眺めます。ゆっくりとカップに注ぎほっこりと味あう。この時ばかりは空間に拡がるコーヒーの香りを楽しめます。今日も一日が始まりました。レイモンド・チャンドラーの小説に開けたてのバーで飲む最初の一杯が素晴らしいとありました。この一杯も同様です。残念ながらお客様には決して楽しめない格別な一杯のコーヒーです。
posted by 焙煎師TIPO at 15:42| Comment(1) | TrackBack(0) | コーヒー
この記事へのコメント
TIPOGRAFIAの店の前で一瞬躊躇う。ドアを押す(引くのだったか?)。カシャ!だろうか、重過ぎず軽過ぎず、良い音だ。入ってしまえば、
そこには現実逃避の空気が漂う。良い空間だ。店主には味わえない客の楽しみ。
Posted by ・・・む at 2006年01月17日 23:30
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