2006年11月21日

トゥモローワールド


『トゥモローワールド』
いろいろと文句も多い映画でしょうね。物語のトーンが暗く救いがない、やたらと人が死にすぎる、痛い描写、画面情報量過多で混乱気味などなど。興行的にも絶対こけます!でもすごい映画です。なぎ倒す力技の演出力はすさまじく、尺は2時間足らずなのに画面から迸る臨場感にくたくたに疲弊されました。
個人的に監督のアルフォンソ・キュアロンとは相性抜群のようです。ハリー・ポッターは無視するとして、世間的には大ゴケの『大いなる遺産』は生涯掛けてフェティシュに愛します。『天国の口、終りの楽園』も同じ。そう、一生のついていきたい監督です。

主演のクライブ・オーエンは最初から最後まで出ずっぱり。基本的には彼の視線で主観的に物語は進みます。主人公の感じた痛みや悲しみを共に感じるしかありません。全身ぼろぼろ汚れ、傷つき、疲弊していきます。観客はどこにも逃げられません。確実に意図的なこの演出をどう感じるのかが評価の分かれるところでしょう。

ワンカットで撮られたカーチェイスや戦闘シーンがすさまじい。主人公と共に体験するかのごとくカットを切ることなく体験させます。映画の最も基本的な文法がモンタージュです。カット割によって、場面を意図的に演出し、虚構の世界を創造します。従来であればカットを割らないオリジナルソース(フィルムに焼き付けられた画像)は嘘の無い現実であると定義づけられたかも知れません。しかしテクノロジーの進化により後工程での処理(修正)が当たり前になり、目の前にある映像の何がリアルで何が嘘なのかすら区別が一見して不可能になりました。果たしてワンカットのこの映像が本当に現実なのかは疑問ですが、リアルであることは事実です。対岸の火事の様に映画館の席にいながら、架空の痛みすら感じる光景です。

正月映画を控えているこの微妙な時期に公開されたこの映画は間違いなく映画館から闇に葬られ、早々にDVD化され何とか資本回収の策に流されるのは必至!
posted by 焙煎師TIPO at 09:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画