
ジェイムス・エルロイの傑作『ブラックダリア』をブライアン・デ・パルマが映画化というだけで映画ファンとしては期待してしまいます。
……が、評価はかなり厳しいですね。
意図的に古い触感のもたっとした粗い画質、古典的なワイプやディゾルブ、フラッシュバックなど古典映画の空気の再現が感じられます。そしてゆったりとしたヒッチコック的なクラシックな演出も確信犯です。でも所々にデ・パルマ的な過剰なスローモーションのサスペンス演出と悪趣味が隠されています(もっともデ・パルマファンは過剰なギミックの暴走を苦笑いしながらも毎回楽しみにしているかな?)。
空回りのひとつの原因は脚本。
現実には迷宮入りしたブラックダリアの謎解きよりも事件を知ったことで途を踏み外していく者の物語です。結論を急ぐ、なんか強引は展開なんですね。とってつけたような真犯人の提示と結論、見せすぎた演出は情感が涌きようも無く宙ぶらりん。
もうひとつの原因は役者。
ジョシュ・ハートネットの薄っぺらい演技を筆頭に二大女優もいまいち振るわず、全員一丸となって猿芝居合戦。そんなん見とうないちゅうねん!
何か一つでもいいとこ見つけて誉めたいのですが、立ちはだかった困難さを憂い、自分が極悪人になった気がして悲しい。あああああ、疲れた。