2006年04月01日

RHODES CAFE

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その店の隅にはビンテージのエレクトリックピアノが鎮座していた。僕はまだその楽器が泣いた姿をこの店では見たことがない。

鍵盤の上部には“RHODES”と刻印があり、全体的には無骨なデザインだが機能的な臭いが漂う。そう、良い機械は必ず固有の合理的な波動をかもし出すものだ。鍵盤に向かう極めて感情的な人間を機械は時として情感いっぱいに優しく包み込み、時として冷たく合理的に付き放つ。気まぐれに放たれる音色は単なる空気の振動を超え、演奏者の声として拡散する。ごくまれには素敵な偶然で“神の声”そのものが浸漬してくることだったある。

その地階にある薄暗いBARはそこそこおいしいコーヒーを出してくれる。店名の“CAFE”はたぶんそんな店主のこだわりなのだろう。酒の飲めない人間にとってコーヒーはアルコールの品揃えよりも店選びのポイントとなる。そう、あとは“音”。この店は、決してうるさくない程度の店内の喧騒とハミングする音楽が絶妙なのだ。だから酒の飲めない癖に何度となく独り訪れたくなる。

隅のピアノは定期的な生演奏などで使用されているのかもしれない。でも誰かが鍵盤に触れているのをいまだ見たことがない。その代りに店内にはいつもレコードが流れている。しばし塩化ビニールから放たれる音楽にもこの楽器が使われている。微妙な浮遊感(空間的な拡がり)のあるピアノは音楽に添い寝するように包み込む。僕も好んでいつもこの音色を聴いている。目の前のピアノから音が放たれることはないが、時々レコードの音がこのピアノから出ているという錯覚に陥る。そんな時は眼を閉じて、耳だけを開く。そして黙って音と会話するのだ。なぜ人はこんなにも素敵な音を創りだせたのか?そして静かに瞬間の眠りに付く。
             レストラン
妄想癖は無間地獄のようなものです。お客様のいない店内で独り妄想ってます。こんな風にRHODESのあるBARあるいはCAFEがあればいいなと独り考えてました。今日から電気用品安全法(PSE)が施行されます。RHODESはもちろんWurlitzer、HAMMOND ORGAN、Clavinetなどのビンテージ楽器は時代の音を感じさせるものです。朝令暮改の混迷はどう落ち着くんでしょうね。
posted by 焙煎師TIPO at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | musica