2006年02月15日

ミュンヘン

オリンピック開催に合わせるかのように「ミュンヘン」が公開中です。あまり積極的にお奨めしませんが、まあ問題作でしょうね。
まず政治的な背景を知らないと入りにくいかな。恥ずかしいことにこの事件のことは全く知りませんでした。ユダヤ人とパレスチナ人のイスラエルを巡る憎悪関係も同様です。
映画自体は70年代のアメリカのサスペンス・アクション映画の肌触りです。リアルタイムで映画館で観た訳ではないのですが、テレビの洋画劇場の定番で夢中になってかじり付いていました。「フレンチコネクション」なんかのタッチを意図的に酷似させてます。粗い粒子の映像、ドキュメンタリー的なリアリズム、生々しいアクション描写などなど…。
さすがにスピルバーグだけあって、ディティールのつくり込みは見事。実話をベースにしているだけに、小道具や衣装、背景などに恐ろしく金がかかっているはず。この時代のスーツは渋い!サイドベンツの細身の2つボタンにフレアのパンツ、結び目がでかいタイ!そしてみんな横分けハンサムな髪型には横山剣でなくても、いいね!と叫びます。車も渋い!おおフランスの情報屋の乗っているシトロエンよ!
同時にスピルバーグの鬼畜趣味丸出しの映画です!何せ「プライベート・ライアン」の冒頭でいきなりノルマンディー上陸のえげつない描写を嬉々として突きつけた男ですから!これはテクノロジーの進歩です。着弾と破壊される肉体の生々しい描写、銃器の乾いた発射音、爆弾が炸裂する重低音などは70年代の映画にはありません。かなり痛いよ!
ディティールにはまりながらも、入り込めないのは主人公に感情移入できない所以でしょうね。善悪の彼岸は曖昧です。復讐のために家族を犠牲にして相手を追い詰め、同時に追い詰められていく主人公に共感はありません。復讐が無限連鎖していき、後半どんどんと疲弊していきます。「フレンチ・コネクション」の刑事は一応「いいもん」であり、麻薬の爺さんは「悪役」で勧善懲悪的に割り切れました。この映画には善悪はありません。個々が勝手な言い分で復讐を増幅させていっているだけで、最後には観客までを重くさせます。もちろん、監督自身がこれを意図的に演出している点ではいい映画なのですが、素晴らしい映画??少しリアルすぎます!映画は幻想であって欲しい人ですから……。
posted by 焙煎師TIPO at 10:15| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画